先生の樹

藤の花ももうすぐおわりそうです
山の緑も、日ごとに色濃くなり
梅雨の季節が終わると短い夏がやってきます

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私にとってこの6月というのは、
どうもよろしくないことが多いのです

具体的に何がどうよくないのか?
これがまたはっきりとは分からないのですが・・・

気持ちがぐらぐらしたり
イライラしたり
やる気が出なかったり・・・
結構な失敗をやらかしたりすることもあります

なるべくこの時期を平穏無事に過ごしたいので
今年は積極的に外へ出ることにしています

先日は盛岡へ行って
『道具屋』さんというショップへ
お邪魔いたしました

お店のお二人に
しあわせオーラを分けていただいて
だいぶ気持ちが上向いてきているところです

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気晴らしといえば、
写真を撮りながら散歩することです

この季節は毎日いろんな植物が見られるので
予定していた散歩距離の十分の一も歩けずに
写真だけ撮っているということもしばしば
気晴らしになるなら、これはこれで結構ですけど(^^;)

先日、家の周りの草刈をしていて
しばらくぶりに目を向けました

「先生の樹」

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小学校の頃、
私は学校が終わると
ほぼ毎日のように児童館へ遊びに行っていました
まあ公営の学童保育、的なものですね

目的は、児童館の先生
『スミ先生』と呼んでいたその先生は
今の私を形作っている要素の大きなものを
私に与えてくれました

化粧っ気などとは無縁の
とても快活で活動的で
子ども達と走り回って遊んでくれました

もちろん私もボールを蹴ったりなどして
遊んでもらったものですが
私が一番好きだったのは
一緒に野山を散歩すること

話に聞く、
「昔の子どもは~」をそのまま体現して見せてくれた
日々の野遊びは私にとって何よりも楽しく興味深く・・・
今、私の持っている自然への関心と知識は
このときに育まれ、原点を成しています

天気がよく、
児童館に子どもが少ない日(←ここがポイント!)は
よく、一緒に里山を散歩しに連れだって行ったものでした

春は山菜、秋はきのこ
道で見かけた草花の知識を話してくれたり
自生していて食べられるものの見分け方を聞かせてくれたり
そして、その場で採取して持ち帰り
児童館で一緒に料理して食べさせてくれたり・・・

ちょうど今頃、田植えの時期には
田んぼのあぜ道に生えているアサツキやノビルを採って、
田んぼの用水路に迷い込んだ岩魚(←よくいる)を捕獲して、
帰り道に近所の農家で世間話をしつつ、余剰野菜を頂いて、
児童館に帰って、それらの材料でひっつみ汁(スイトンのようなもの)を
作って食べたことは今でも鮮明に覚えています
(岩魚は焼干しにして出汁を取るのです(^^))

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春先に児童館の裏山を一緒に散歩していたときのこと
(当時の児童館は誇張抜きで『山の上』に建っていたので四方を山に囲まれていて、遊びのロケーションとしては最高でした)
その日は「たらの芽」を取りに行っていたのですが
山道の途中で、先生は道の真ん中に生えていた
小さな、ちょうど苗木くらいの大きさの木を
無造作に引っこ抜いて
「これうちに持って帰って植えるといいよ」
と言って持たせてくれました

家に帰った私は
さっそく、庭の真ん中にスコップでせっせと穴を掘って
その『木』を植えました
当時は何の木かは分かりませんでしたが
先生がくれたのだからきっとすばらしいことに違いない!
そして、この木が大きくなったらきっと素敵に違いない!!
と何の迷いも無く家の前に植えました

で、
帰ってきた父に開口一番怒られました

「誰だ!?こんな所に木植えたやつぁ!?」

・・・・・・・

まぁ、ね。
家の前は駐車場でもあり、
一応、私的には車の通れる空間をきちんと計算して植えたのですが
そういう問題では無かったらしく(^^;)

問答無用で掘り返された木を見て
私は号泣しました

で、父はしぶしぶというか
妥協案として、家の後ろの斜面に
植え替えました

あれからもう25年くらいにはなりますね
その『樹』は枯れることなく
大きく成長して現在では身の丈の4倍にもなっています

あのあと、徐々に関心も無くなり
いつしか忘れていたのですが
この仕事に就いてふと思い出したのです

知識のある今ならこの樹が何であるか
ちゃんと分かります

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街路樹によく用いられる樹で
新芽は色がさわやかで産毛を纏っているようにも見えます
森には散在していることが多く
大木なることはあまりありません
木材としては優れた点も多いのですが
流通量が少なく
質のよい大きなものは銘木として
価値があります

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あの時、先生は
きっと何気なく持たせてくれたんだと思います
深い意味も無く

でも、その時の樹が
こうして大きく成長し
今の仕事の自分と繋がっていることに
不思議な縁を感じます

スミ先生は今もご健在
どうか末永く御元気で

1人のご厚意をいただいております