初めての巡りあわせ

昨晩は、ビール片手に映画鑑賞などしておりました
かなり有名なもので、映画ファンなら知らない者はいないというほど

「12 Angry man(邦題:十二人の怒れる男)」
いちおう解説いたしますと、
モノクロ時代の映画で、法廷ものの密室劇
父を殺した罪に問われている少年の裁判を巡る陪審員達の物語

ほぼ全編を通して、たった一室でのやり取りだけで構成されており
凝ったカメラアングルや場面展開などが一切無く
12人のおじさまたちの会話のみで出来上がっているという
全編通して地味な印象
これだけ聞くと、どこにおもしろさがあるのか?といった感じを受けますが
最期まで緊張感と臨場感にあふれ、内容にのめりこんでしまうほどの
おもしろさを秘めております

見れば分かる、そういった映画です

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私とこの物語との初めての出会いは
高校生のときの芸術鑑賞会
初めて観る本格的な舞台演劇の演目がこの「十二人の怒れる男」でした

原作は、生放送のテレビドラマで放送されたのが最初で、
そのため舞台演劇にぴったりの内容であり、
実際に各地で数多く上演されているそうです

名作は色々な媒体で目にすることができるものですが
おそらく、初めて見たのが映画だったのと舞台だったのでは
感じ方も違うでしょう
残念ながら、その両方を味わうことはできません

その当時、件の舞台を観終わったあとの
友人との会話を思い出しました

この頃の男子生徒の「お利巧さんなイベント」に対する反応としては
たとえおもしろくても、突っ張って「つまんねー」「だりー」的な
答えをするのが正しい作法でした(笑)

とはいえ、当時から既に空気の読めない人間だった私は
「いやーおもしろかったねー」と素直にその友人に感想を述べました
するとその友人
「おれ、この映画見たことあるんだよな、だから結末分かってたんだよ」
と、お作法に則りながらも意外な反応
「へー、そうなんだ」
と、私

そのときの会話はそれで終わりました
ふと思い出したのですが、そのとき友人は
見たことある、わかってた、とは言いましたが
「つまらなかった」とは言いませんでした
きっと、映画とは違ったおもしろさを味わっていたんでしょう
今ならその感覚が分かります

と同時に、
「映画を見てから舞台を見る」場合と
「舞台を見てから映画を観る」場合とでは
感じ方が違うのだろうなぁ、とも思います
冒頭で述べたとおり、残念ながら『初めて』
どちらか一方だけで両方は無理なのです

知らなかった頃には戻れない
ちょっと残念ですが、このことがよりいっそう
一期一会の感慨を深めているのでしょう

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せっかくなので、映画の感想も少しだけ

(たぶん)主人公の陪審員8番(俳優:ヘンリー・フォンダ)の
正義と信念にあふれる行動はもちろん、どなたも惹かれるものがあると思います
私個人的には、陪審員5番の出自に劣等感を持ちながらも
いち早く疑問を持ち、自分の考えを言い切ったところ、
陪審員6番(この映画、人物の名前さえ出てこないのでこういう呼び方になってしまいます(^^;))
のご老人にいたわりと敬意を持っているところが地味ながら強く印象に残っています

それとともに、
もし私自身が同じ状況に置かれたとき
正義と良心に従い冷静に自分の考えを述べられるのかということです
人見知り&対人苦手なわたしだったら、
言い争いが発生し雰囲気が悪くなってしまったら
感情的になって、冷静に話し合いということができるだろうかと

登場人物たちは何度も争い衝突し、それでも決裂することなく
最期には「全員一致」という結果を出しています

陪審員8番の強さは正義と信念の強さ
そして、最初に意見を変えた陪審員9番のご老人は
支える事、優しさの強さなのだと思いました
ほんの少しでも、彼らのような強さを持っていたいと思います

地味ですが、大人のおもしろさのあふれたこの作品
機会がありましたらぜひ一度ご覧になってください

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